★モネ 睡蓮のとき★  
  京都・京セラ美術館
R7年4月下旬
今回の展示の主要なポイント
マルモッタン・モネ美術館所蔵の作品を中心に、67点が展示されていた。
モネが、晩年に至り、より抽象的かつ内的なイメージへと
変化する様子が良く分かった。
ただ私の好みの
初期の印象派を代表するような作品は少なかった。
でも「チャーリング 橋」の2枚の作品や幾つかの「睡蓮」は心地良かった。
本展の中心は、2メートルに及ぶ大画面の〈睡蓮〉の数々で、
以前にオランジェリーで鑑賞した大画面を思い出した。

また白内障を患いながらも描き続けた晩年の作品の
力強い筆致と絵画に対する
強烈なエネルギーを感じるが、
素人には色彩の優美さは感じられなかった。

解説と絵画の画像は公式ホームページから借用した
 


     
     
     
     

  **第1章:セーヌ河から睡蓮の池へ**
この章では、モネが1890年に50歳でノルマンディー地方の
ジヴェルニーに居を構え、
連作の手法を確立した時期に焦点を当てています。

1890年代後半には、モネが3年連続で訪れたロンドンの風景や、
身近な存在であったセーヌ河の風景が主要なモチーフとなりました。

1893年には、モネは庭の土地を買い足し、その2年後には
この「水の庭」が初めて作品の
モチーフとして取り上げられました。

1903年から1909年にかけての約80点に及ぶ〈睡蓮〉の連作では、
画家の視線は急速に水面へと近づき、
周囲の描写は次第に消え、水平線のない水面と反映、
光と大気の効果のみが描かれるようになりました。
晩年のモネにとって最大の創造の源となった過程が示されます。
 
     
     
     
     
    **第2章:水と花々の装飾**
1909年の「水の風景連作」展後、視覚障害の兆候や妻の死といった
不幸に見舞われましたが、
1914年に創作意欲を取り戻し、装飾画の構想に再び取り組み始めます。
当初は睡蓮に加え、庭の多様な花々もモチーフとして想定していましたが、
最終的には池の水面とその反映のみを描くことを選びました。
実現しなかった幻の装飾画の計画で重要な役割を担っていた
藤やアガパンサスの作品も紹介されています。
 
     
     
     
     
   
**第3章:大装飾画への道**

この章では、モネが長年追い求めた、睡蓮の池を描いた巨大な
パネルで楕円形の部屋の壁面を覆う「大装飾画(Grande Decoration)」
の計画に焦点を当てています。
最終的にパリのオランジュリー美術館に設置される
この記念碑的な壁画の制作過程で、
70代のモネが驚異的なエネルギーで制作した、水面に映る木々や
雲の反映をモチーフとする
作品群が展示されます。

1914年以降の〈睡蓮〉は、長辺が2メートルを超えるものが多く、
1909年までの作品と比較して4倍以上の面積となりました。
巨大な作品制作のため、モネは新たなアトリエを建設し、
戸外での習作をもとに、
幅4メートルに及ぶ装飾パネルの制作に取り組みました。
これは、自然の印象を内面化し再構成する、
印象派絵画を超える試みであったとされています。
モネはこれらの大装飾画に関連する作品をほとんど生前に手放さず、
1926年の死の直前まで試行錯誤を重ねました。
 
     
     
     
     
   **第4章:交響する色彩**

モネの絵画の色彩が生み出す繊細なハーモニーが、
同時代から音楽に例えられていたことに焦点を当てています。
しかし、1908年頃から顕在化し始めた白内障の症状は、
晩年のモネの色覚に影響を与えました。
視力悪化に苦しみながらも、モネは1923年まで手術を拒否し、
絵具の色表示やパレット上の位置を頼りに制作を行いました。
1918年頃から晩年には、大装飾画と並行して、
日本風の太鼓橋や枝垂れ柳、
ばらのアーチのある小道などをモチーフとした小型の連作が制作されました。
これらの作品は、激しい筆遣いと鮮烈な色彩は、
後の抽象表現主義の先駆と位置づけられ、
モネ晩年の芸術の再評価を促しました。

 
     
     
     
     
   **エピローグ:さかさまの世界**

大装飾画の制作が始まった1914年が第一次世界大戦の始まった年で
あったことに触れ、
苦難の時代におけるモネの制作活動の意味合いを考察しています。
1918年の休戦後、モネがジョルジュ・クレマンソーに戦勝記念として
大装飾画の一部を寄贈することを申し出たこと、
そしてそこに描かれた枝垂れ柳が悲しみや服喪を象徴するモチーフで
あったことが語られます。
クレマンソーは、睡蓮の池の水面に「さかさまの世界」を見出し、
モネの〈睡蓮〉は、画家の生きた苦難の時代から現代に至るまで、
人々に永遠の世界への想いを抱かせる
よすがとなっていると結ばれています。